第7回「南山舎やいま文化大賞」発表

厳正な審査の結果、第7回「南山舎やいま文化大賞」は以下の作品に決定いたしましたのでお知らせします。

大賞
山口晴幸
「<八重山美ら海の叫び>海洋越境廃棄物の脅威~忍び寄るマイクロプラスチック汚染~」

【内容】
 沖縄県の海洋廃棄物の調査に長年従事してきた著者の調査報告と提言の書といえる。目次に明らかなように、沖縄・宮古・八重山の海岸に漂着する「海洋越境廃棄物」の現状と、それのおよぼす自然や生態系、そして人間の健康生活への影響などを採り上げ、その対策の必要性を説いている。まさに沖縄~八重山にいたる自然環境破壊に対する警告の書である。

【講評】
 沖縄~八重山の海岸に漂着する「海洋越境廃棄物」の現状がどのようなものか、そしてそのおよぼす影響の問題などを的確に掬いだし、これに対する対策の急務であることを説いていて、説得力がある。
 約20年に及ぶ実地調査により明らかにされた事実は、我々をとりまく環境が如何に破壊され、汚染された状況にあるかを知らせてくれる。本稿が提起する問題は、学問上のことではない。我々の住む地域の問題と密接した、まさに社会的な問題である。学問が社会と密接な関係を保ち、社会を良くするために力あるものであることを改めて知らせてくれる。
「海洋越境廃棄物」による環境汚染・破壊は沖縄が日本国内でも群を抜いているが、八重山はその中でも異常に高い数値を示している。宮古も同じである。大陸に近く、黒潮の洗う海域に存在しているという地理的事情によるものとはいえ、これを放置して置くわけには行かない。「海洋越境廃棄物」の問題はこの地域、いや、地球上にすむすべての動物・植物の生育・健康に大きく関わる問題である。このことを著者は、自らの調査によって得られたデータで、分かりやすく示してくれている。私たちの八重山はこのように汚されているのである。漂着廃棄物を撤去しなければ、マイクロプラスチック化して、これが食物連鎖のなかで、新たで深刻な健康問題を引き起こす可能性について述べている。
 その解決策として著者は、海岸清掃がもっとも手っ取り早い対策だという。そして、現状ではそれは、ボランティアによる活動にまつところが大きいと言っている。確かにそのような部分があるだろう。しかし、これは、ボランティア活動にゆだねられる問題ではない。国家が力を尽くし、国土を健全な状態に保つべきである。「海洋越境廃棄物」の流出源であるアジア諸国との積極的で粘り強い交渉が必要である。むしろ、このことを強調すべきであろう。著者も論考の末尾でこれを説いているが、より強いトーンで主張して欲しいことである。
 八重山、いや沖縄、そして地球上の海とそこで命を育んでいる全ての生き物、人間達の為にも全人類で取り組みべき課題である。地域の問題はグローバルな問題と直結する。このことを教える著作である